日々の出来事

伊東園ホテル草津に行った

2016年9月28日

話は7月までさかのぼる。
前回の旅行で味をしめた妻は、次の旅行先候補を物色し始めた。慣れた手つきでスマホを駆使し、そして探してきたのが「伊東園ホテル 草津」である。
1泊2食付きで料金は7,800円。夕食は90分のバイキングで、アルコール飲み放題付きの料金だ。
「名湯草津」というロケーション。そしてビールが飲み放題。これは安いと言えるかもしれない。
ものは試しでネット予約を入れようとすると、やはり人気があるらしく、ずいぶん先まで土曜や連休の予約は埋まっていた。
仕方なく、比較的空いている9月の金曜日に、一泊で予約を取ることにした。

草津温泉を愉しむ

そして9月。旅行当日である。
金曜の関越道下り車線を順調に北上してゆく。渋川伊香保ICで降り、県道35号をのんびりと流す。スマホのナビに従い国道145号、292号と辿って行けば、3時間ほどで草津に着く。
目的地の伊藤園ホテル草津は、草津温泉の中心街である湯畑から車で10分ほど走った先の「静かな別荘地」といった佇まいの中にあった。

もともとは「かんぽの宿」だったらしい

もともとは「かんぽの宿」だったらしい

到着は4時過ぎ。チェックインカウンターで名前を告げ、料金を前払いで支払う。そして、簡単に宿泊システムの説明を受ける。
大浴場の利用時間は24時まで。翌朝は5時から利用できる。
夕食のバイキングは2部制となっていて、この日の1部はすでに満杯。私たちの夕食は自動的に2部となった。

激安ホテルはセルフサービスが基本である。自分のサイズにあった浴衣を選び、部屋に向かう。
この浴衣のサイズが結構適当で、妻の浴衣は丈が長過ぎ、その姿はまるで「殿中でござる」的な感じになってしまった。
サイズ交換に行った妻の話によると、同じように交換に来た人が数人いたらしい。
部屋は洋室のツインで、温泉宿の趣はないが清潔感があり、広さも十分だった。

洋室のツインルーム

洋室のツインルーム

部屋でひと息ついた私たちは、さっそく大浴場へと向かった。

大浴場には広い内風呂、露天風呂と、少し小さめなサウナと水風呂がある。
「泉質:硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉」とある。ネットで調べたところでは、源泉掛け流しらしい。
見れば色は無色透明で、硫黄の香りもほぼしない。湯を掌にさらってみると、これはなめらかな感触である。
顔についた湯をペロリと舐めてみると、やや濃いめの塩味だ。目に入ると、痛い。
湯の温度はちょうどよく、湯質がいいのだろうか、肌が「長く入っていたい」と語りかけてくる。
ロングドライブの疲れを癒すには、充分すぎる良質の温泉だった。

夕食バイキングと飲み放題

時間になって2階の食堂に行くと、まるで昼の学食のように大勢の人が並んでいた。「バイキングってこんなに並ぶものだっけ?」と私たちは困惑した。もう、腹はぺこぺこなのである。二度も温泉に浸かったおかげで、喉もカラカラに乾いていた。
よく見ると、客の年齢層が高い。そして、皿に料理を盛る動作が、あきらかに遅い。
「ここは老人ホームか…」
なかなか進まない列に並びながら、私は高齢化社会の縮図を見たのだった。

飲み放題のアルコールもセルフサービスだ。
冷蔵ケースの中の冷えた小ジョッキを取り出し、ビールサーバーの所定の位置にセットする。そして、ボタンを押せば十数秒で生ビールの完成である。
予想していたとおり、料理は可もなく不可もなく、といったところだったから、私たち夫婦は当然「飲み」に走った。

夕食バイキング。これは妻のチョイス。

夕食バイキング。これは妻のチョイス。

無難な味の唐揚げや鯛とマグロの刺身をつまみに、ビールを飲み干す。飲み干したら、注ぎにいく。ジョッキはその都度冷えたものに取り替える。
入浴後の冷えた生ビールは、ことさら旨い。だから、何杯でも飲めた。何杯飲んでも、旨い。

生ビールの飲み放題に酔いしれた私たちだが、この日の食堂には天井付近に数匹のハエが飛び回っており、食事を落ち着いて摂るにはいささか不向きだったと言わざるをえない。
こういうところにも気を使わないと、いくら価格が安くとも、若い人たちには敬遠されかねないだろう。

夕食後は再び温泉タイムである。妻と順番で大浴場へ向かうと、入浴客は4名ほど。夕食時にあれだけたくさんいたご老人たちは、いったい何をしているのだろうか。湯畑まで距離があるので、夕食後はふらりと湯畑散歩、というわけにもいかないはずだ。まったく不思議である。
今度はサウナにも入ってみた。頑張れば4人くらいは入れそうな小さなサウナだ。さすがに温泉でサウナに入る酔狂な客は少なく、貸切状態だ。
サウナの後の水風呂は容赦なく冷たく、酔いを一気に冷ましてくれる。
そして、クールダウンした体を再び温泉で温める。
静かだ。
静寂の中に湯の流れる音だけが聞こえる。
「ああ、今夜もゆっくりと眠れそうだ」と心の中でつぶやく、贅沢な時間だった。

朝風呂と朝食と午前風呂

翌朝も起きてすぐ温泉に浸かり、それから朝食を摂りに大食堂に向かった。
朝食もバイキング形式である。そして…
この老人たちはいったいどこから湧いてきたのだろうか。私の眼の前に、再びご老人たちによる長蛇の列が現れたのだ。
「ここは老人ホームか…」

朝食もプレートは同じ。これは私のチョイス「ザ・朝ごはん」

朝食もプレートは同じ。これは私のチョイス「ザ・朝ごはん」

妻の朝食プレート

妻の朝食プレート

昨晩飛び回っていたハエも、今朝は見当たらない。
妻曰く「宿の朝食はついついたくさん食べてしまう」とのことだが、いつもたくさん食べてるように、私は思う。

朝食を終え、部屋に戻る。
チェックアウトは昼12時までだから、まだまだゆっくり温泉を楽しめる。

のんびりと温泉に浸かる。
午前の風呂も、多くて4、5名の客しか見当たらないのはなぜなのか。
いったいぜんたい、食堂にいたご老人たちは、どこで何をしているのか。
謎は深まるばかりの「伊東園ホテル草津」だった。

総評

この宿は「飲み放題付き」というのがポイントだ。
ビールは小ジョッキだから、例えば1杯200円と考えると、10杯飲んで2,000円。
宿泊料金が7,800円だから、ビール代の2,000円を引くと「一泊二食付 5,800円」というふうに考えられる。そして、飲めば飲むほどお得度が増す。
逆に、料理のクオリティを考えると、酒をあまり飲まない、という人には割高かもしれない。
温泉の満足度は高かったので、「温泉好きでビール好き」という人にはオススメの宿だと思う。