連載ブログ : FREETELで格安スマホ生活を始めた
第二回 そして購入へ
年が明け、2016年1月。
正月休みを終えた私は、機器本体と付属品、契約書類一式を箱詰めし、事務所近くのソフトバンクショップへ足を運んだ。
Pocket WiFi を解約するためだ。
そこはカウンターの女性店員が二人、接客係の男性店員が一人という、小さな店だった。
順番待ちの先客が数名いる。私も受付札をもらって椅子に腰掛けた。
やがて接客係の男性店員が近づいてきて、座っている私の傍で片膝を床につき、物腰やわらかに用件を訪ねてくる。
黒系のスーツと相まって、それはまるでキャバクラの黒服、といった風情である。
経験上、彼の前職が水商売系なのはおそらく間違いない、と断言した私は彼を「黒服」と呼ぶことにした。
「黒服」は、私が Pocket WiFi の解約手続きにきたことを告げると、カウンターに案内することなく、その場で解約手続きを進めてくれた。
さすが水商売で鍛えられた接客スキルは只者ではなかった。
「長い目で見れば、人生に無駄などというものはない」
と言ったのは、私の尊敬する男の言葉である。黒服もしかり、人生に無駄などないのである。
こうして私は「順番待ち」などという不毛な時間を費やすことなく、Pocket WiFi を解約することができたのだった。
そして注文へ
後顧の憂を絶った私は、FREETELの web site から MIYABI を注文することにした。
選んだ色はシャンパンゴールド。
ちなみにシャンパンなど何年も飲んではいない。あれはどんな色だったか。
照明をおとした薄暗い店内。着飾った女たちの嬌声。
過去を思い出したところで、何もいいことなどは無かった。
気を取り直し、通話付きのSIMカードを選ぶ。
入力フォームに氏名や住所を打ち込んでゆく。
本人確認書類。免許証の写真を iPad mini のカメラで撮り、アップロードする。
クレジットカード番号を打ち込み、送信ボタンをクリックする。
それだけだった。
拍子抜けするほど簡単に、私はスマホ注文の儀式を終えた。
商品が届いたのは二日後だった。
「SAMURAI 雅(MIYABI)」というだけあって、「和」のテイストの箱は、中に硯でも入ってるかのようだ。
やや緊張しながら箱を開け、MIYABI を手にとってみる。
ひんやりと冷たい手触り。
見ると正面も背面も白だった。シャンパンゴールドはどこにあるのかというと、ふちの部分だけだ。
それはまるで「白い石板」といった風情である。
ありがたいことに、SIMカードはあらかじめ入っており、電源を入れるとすぐにセットアップが始まる。
「言語設定」は当然「日本語」。
「WiFiネットワークの設定」「Googleアカウントの設定」などと順番に進めてゆくと、すぐに使えるようになる。
私は公私ともに Google のサービスを常用している。
ブラウザは Google Chrome。
仕事のメールは Gmailへ転送し、送信も Gmailから仕事用のメールアドレスで送れるように設定している。
Googleアカウントで同期された MIYABI は、この時点で既に私色に染まっていた。
いや、私こそが、気づかぬうちに Googleの下僕と成り下がっていたのだった。
私は自分を嗤った。
しかし、Googleの下僕であるがゆえに、私と Android端末である MIYABI との相性は完璧と言ってよかった。
こうして私は、これから長い付き合いになるであろう相棒を、手にしたのだった。